精神科病棟へ移動!?

「川村さん、来月から精神科行ける?」

部長から、いきなり人事のお達し。

ウチの薬剤部では、「人事はいっつも急よ~」と言われていたけど、まさに急。

なんの前置きもなしにいきなりの宣告。

 

私は、中途採用でこの木下総合病院に来た薬剤師、川村トミ子、29歳独身、彼氏なし。

生まれも育ちも兵庫県で、兵庫県の私立の大学の薬学部を卒業した。私立の薬学部は、ちょっとばかりお金がかかる。団塊世代のモーレツサラリーマンの父と専業主婦の母には頭が上がらない。

父が定年退職してルーツの田舎に引越しをすることになったので、私も父母に一緒について来た。

田舎はいい所だけど、言葉がね。ちょっと分からないよ。方言は可愛いけど、微妙にイントネーションが関西とは違う。ここの方言は常に語尾が上がるから、質問しているのか言い切っているのか一瞬躊躇してしまう。 まあ、時間が解決してくれるかな。いつか分かるようになるでしょ。

私の勤務する木下総合病院は、田舎にしてはまあまあの大きさの救急病院だ。

精神科病棟は、別館になっている。別館になっている理由は後で分かった。

 

この病院に来る前は調剤薬局にいたので、病院の業務が全然分からない。

薬剤師の就職先は、薬関係の研究所、製薬会社のMR(薬の情報提供等)、治験関係、ドラッグストア、調剤薬局、病院など様々だけど、大半の薬剤師が就職するのが、直接薬に触るドラッグストア、調剤薬局、病院になる。

薬剤師という職種は同じでも、ドラッグストア、調剤薬局、病院では薬剤師の仕事内容ではかなり違う。大きく違うところで言うと、病院の薬局では注射を使用するけど、調剤薬局ではほとんど注射に携わらないし、ドラッグストアでは注射は使用しない。

病院の薬剤師は医師や看護師や管理栄養士やリハビリ等のスタッフとの関わりがある。他の職種の役割や動きが分からないとスムーズに行動できないことも多い。木下病院は電子カルテだから、紙カルテ時代に多く見られた紙カルテの取り合いは起こらないけど、調剤薬局から病院に来た私としては、他部署との関わりが全く分からないから、毎日が初見。不安でいっぱい。

 

とにかくクビにならないように必死だったので、精神科でもなんでもオッケー。

 

「どこでも行きます!」と部長に答えた。