摂食障害の患者さんの服薬指導後に、カルテの書き方を習得。

さてと、カルテを書こう。

電子カルテの前の椅子に腰を掛けると、ふいーっと溜息が出る。

もう立ち上がれないかも。

この病院の電子カルテSOAP形式で書くことになっている。

 S(Subject)…患者さんが言ったことを簡単に書く

 O(Object)…主病名、検査値、薬について書く

 A(Assessment)…自分の意見や考察を書く

 P(Plan)…今後のプランについて書く

 

そうだ、Planには下剤を確認することを書かないとね。

 

これでいいかな。

「岡林先輩、若松さんのカルテを書き終わったので確認してもらっていいですか?」

「はい、今こっちで開けますね。」

電子カルテは、どこの端末でも開けるのが便利。

 

数分後に岡林先輩が声をかけてくれる。

「しっかり書けていると思います。

付け足すとしたら、O(object)に川村さんが思った、若松さんの今日の印象を書いておいて頂けますか? 落ち着いているとか、テンションが高いとか、落ち込んでいる様子だとか、川村さんが感じたことをそのまま書いて下さい。

過食嘔吐の患者さんなので、過食嘔吐が激しくなるとアゴのラインが腫れてくることがあります。もしそういうことがあったら、簡単に書いておいて頂けると次に他の薬剤師が入る時に有難いです。」

「岡林さん、精神科の薬剤師は担当制ではないのですか?」

「担当制にするつもりですが、川村さんがお休みの時にイレギュラーで服薬指導に入らなければいけない時もありますから。」

 

そうこうしていると市川主任の声がする。

「そろそろ上がってね~。私はお先に失礼するわ~。お疲れ様~。」と上機嫌に帰っていく。

岡林先輩が市川主任を笑顔で送り出してから言う。

「お孫さんが来られているので、会いたくてたまらないみたいですね。」

そうか、市川主任は還暦を過ぎているからお孫さんのいる年齢。

 

市川主任はあまり化粧をしないけど、UVクリームやら帽子やらの紫外線対策が万全のせいか、シミや皺が少ない。

キャピキャピしたキャラクターもあってか若く見える。とは言っても50代に見えるくらいだけど。

 

「川村さんもそろそろ上がって下さいね。」と、岡林先輩に言われて帰ろうとした瞬間、助手のアリサちゃんがいつもより1オクターブ上の声で駆け寄ってくる。

「川村さん!聞いて下さい。」

「アリサちゃん、ど、どうしたの?」