川村トミ子の休日。精神科は今日はお休みです。清水の舞台から飛び降りて、車買ってみました。
とりあえず、家に帰ろう。金曜日の夜だけど、まっすぐ家に帰ります。
私もそろそろ三十路。
もうちょっと可愛かったら、もうちょっと賢かったら、素敵な人に見初められて、今頃ママになってるのかなあ。
顔の造形も整っていないし、不器用だし、薬剤師って言う、なんかパッとしない職業だし。
大学では、「アメリカでは、信頼度ナンバーワンの職業だから。」と耳にタコができるほど言われてきたけど、居住地は日本。日本の薬剤師なんて、もちろんピンキリだけど、私みたいな病院とか調剤薬局の薬剤師なんて、言ってみれば隙間産業。それに、病院の薬剤師って薄給。
飢え死にはしないかもしれないけど、ブランド物のバッグとかは買えないな…。
最近、薬学部が6年になったけど、私立は元が取れないよ。お金持ちの道楽学部になっちゃうんじゃないかな。
はぁ、愚痴愚痴思ってしまうのは、疲れているサイン。
まあ、私には恋愛は似合わないし、一生独身で生きてる女性なんか星の数だけいるわ。地味に過ごしていこう。
でも、1つくらい趣味があってもいいな。武道とか、なんかカッコいい感じの疲れすぎない感じの…。う~ん。
電車の時間まで30分くらいあるから、スーパーに寄って行こう。
田舎は1時間に1~2本しか汽車がない。貴重。
ここのスーパーは安い。
趣味が何って聞かれたら、『スーパー巡り』かもしれない。
スーパーの中をウロウロするのが大好き。
置いてあるものなんて遜色ないけど、なんか好きで、1,2時間すぐに経つ。
母親は、値引きシールが貼ってあれば全て買ってしまうくらい、値引きシールが好きだけど、私は値引きのものはあまり買わない。以前、値引きシールが貼ってあるパンを買ったら、ぱさぱさだった。新鮮な食べ物が食べたいのです。
今日は、どうしようかな。お、ココナッツミルクの缶詰がある。これは、カレーだな。
S&Bのカレー粉は家にあるし、ニンジン、ジャガイモ、ズッキーニ、大豆の水煮もあるから、今日のお買い上げはココナッツミルクだけ。
めっちゃめちゃ辛くして食べよう。
母親に今日は私が作りますとメールを送っておいて、帰宅後にすぐ料理に取りかかる。カレーは、パパパっとできるのがいいね。できた。お父さん呼んでこなきゃ。
頂きまーす。辛い、汗が出る。
こりゃこりゃ。美味しい、けど、辛い。
本当に美味しいのか?と自問したくなるほど辛い。でも美味しい。美味しいのは間違いない。
ちょっと我慢大会みたいになってきた。
ふ~、ご馳走様。汗かいちゃった。お風呂に入ろう。
土曜日ってステキ。今日が終わってもまだ日曜日がある。
家事は週末にまとめてする。掃除とかアイロンがけとか平日はなかなかできない。
食事は母親と半々で作っている。母親は炊事が嫌いなので、料理するとすごく喜ばれる。私は料理は嫌いじゃない。というか、丸二日外食だとそれだけでしんどい。せめてお昼だけでも自分で作ったものが入っているといいんだけど。超田舎で、外食もせずに育ったから仕方ないかな。なんせ、コンビニまで歩いて45分の僻地に住んでいたから。
さて、掃除すんべ。
クイックルワイパーって便利。でも実は、真のクイックルワイパーは使ったことない。いつも百均のを使ってる。お金持ちになったら、いつかは真のクイックルワイパーを使ってみたいと思っている。
ちょっと親の家に行って、ホットケーキでも作ろうかな。小腹がね。私の家には一切食料品がない。いつも親のキッチンを使ってる。節約、節約。
「あれ?お父さん達どっか行くの?」
「トミ子、今から車屋さんに行ってくるよ。そうだ、トミ子も行くか?」
そうだ、私も車が買いたかったんだった。むしろ、この田舎で車がなくて今までよく生きてたわ。
「うーん、行く。ちょっと待ってて。」
顔も体型も丸いけど、運転上手な母の運転で大手の自動車メーカーに行く。
お店に入ると、やたらキレイなお姉さん達が接客してくれる。無料のドリンクのメニューを手渡される。
「トミ子は何飲む?お母さんは、カプチーノ。」
やたら楽しそう。母はとにかく無料の物が大好き。いやしいのう。
父親は定期点検か何かで来たらしい。父親の用事が済んだらしく、担当の人と一緒に戻ってきた。
「大枝です。よろしくお願いします。」と、丁寧に名刺を渡された。
「今日はお車をお探しとのことで、どういったものをご希望でしょうか?」
「一応、ヴィッ○とデミ○を考えています。乗るだけなので、オプションは最小限でいいんですが、バックモニターとナビは欲しいです。いくらくらいになりますか?それと、納期はいつくらいになりますか?」
簡潔に希望を述べてみた。
大枝さんは実直な笑顔で答える。
「ナビは何種類かありますが、それほど遠方に行かれないのであれば、この一番安いもので良いかと思います。DVDはかなり稀ですが、データが飛んでしまうこともあるのですが、CDであればSDカードにデータを保存しますのでデータが飛ぶことはないと言えます。パープルシルバーであれば、1ヶ月後くらいに入荷予定です。中古車もありますがご覧になりますか?」
なぜか両親もついてくる。
う~ん。あんまり安くない。中古車ってもっと安い感じがしたけど、一台100万円近くする。新車より安いけど、すぐに車検が来るなら…今はエコカー減税もあるし…。う~ん。
「分かりました。他のメーカーさんにも行ってから考えます。」と、言ってお店を出た。
母親は無料で提供されたカプチーノが美味しかったらしく、ご満悦。
父曰く。
「最近は中古車もあんまり安くないな。それだったら新車の方がいいかもしれない。お、中古車屋さんがある。一応寄って行こう。」
父が張り切っている。
「いらっしゃいませ。」
「ヴィッ○とかデミ○はありますか?」
「ヴィッ○はありますよ。こちらです。」
80万か…。これくらいだったらいいかな。
父が、それはそれは楽しそうに担当者と話している。自分の小さな知識をひけらかしてるんだろうなあ。ディーラーさんは、どうでもいいことでも誉めてくれるから。定年後のヒマつぶししてる。
あ、私も聞きたいことあった。
「デミ○はあんまり出ないですか?」
「出ないことはないです。でもヴィッ○の方がよく取扱います。」
ヴィッ○強いな。まあ、この田舎だけの話かもしれないけど。
「ちょっと考えます。」
やっぱりヴィッ○にしよう。もう、けっこう人に聞いたし。壊れにくいみたいだし、遠出することもあんまりないし。よし!
「お父さん、お母さん、私、ヴィッツにする」
「それだったら、もう一回トヨタに行こう。」
「行く。」と、やたら喜ぶ母。この人、もう一杯カプチーノ飲もうとしてる。私には分かるよ。
「ちょっとお父さん、電話してみるから。」と大枝さんに電話をかけ始めた。
「大枝さん、今だったら話せるって。彼はもともと修理をしていた人で、知識が豊富だからね。」と、なぜだか父が自慢げに話す。
「お待ちしておりました。こちらへどうぞ。」と大枝さんが笑顔で迎えてくれる。
車を買うなんて初めて。
「新車でヴィッ○を買うといくらくらいになりますか?」
「そうですね。概算で180万円になります。」
「お父さん、こちらのカード持ってるからこのポイントも使っていいよ。」
おとうさん!良い物持ってる。いつもはポイントカードとか嫌いなのに。ありがとう。
初めての大きな買い物だから、すごい緊張する。とりあえず言われたところに言われたことを書く。
良く分からないけど、これは仮契約らしい。まあ、これで待ちリストには載ったらしいから一安心。
今日は一日仕事だったな。
「お父さん、お母さんありがとう。疲れたね~。」
「ご飯食べて行こうか。」
「うん」
「回転寿司にしよう。」
え~。回転寿司か。私とは対照的に父と母は楽しそう。回転寿司が好きな夫婦。私も、けっこう好きだけど。