統合失調症は、治るのか?バカになるのか?

そういえば、統合失調症って治るんだろうか?

「岡林さん、統合失調症って治るんですか?」

「治るというのは…分かりません。治るというのが、『一生再発しない』ということであるなら、死ぬまで分からないことです。でも、統合失調症で長期入院されている患者さんが非常に減ってきていますし、薬を止めて、定期受診だけの方もいます。ですが、やはり個人差も大きいです。昔と違うのは、薬が良くなってきたことによって、通学や就職、結婚や出産の機会が増えてきたことだと思います。」

困ったように笑って、岡林先輩が答えてくれる。リンリンと電話が鳴って、市川主任が出た。短い会話の後、器用につい立の横から首だけ出して言う、

「皐月ちゃん、今からカンファ(カンファレンス)に行ける?」

「はい。川村さん、ちょっと待っていて下さいね。」

岡林先輩は、いつもの様に音もなく病棟に去って行った。

 

気が付いたら就業時間になっていた。

市川主任が、「川村さん、今日はもう帰って大丈夫よ。また明日頑張ろう。」と、いつの間にか着替えて、一番に帰って行った。

岡林先輩がまだ病棟から戻ってきてないけど、私も市川主任にならって帰ります。

疲れたもん。10時に寝ます。

 

次の日、岡林先輩に出会うと、

「川村さん、昨日はごめんなさい。カンファの後、色々頼まれてしまって。続きを今からお話ししても大丈夫ですか?」

いつもの様に丁寧な人だ。

「はい。お願いします。」

声が元気でも、寝過ぎで腫れぼったい目をしてたら説得力ないだろうな。あー、眠たい。

岡林先輩はいつもと変わらない。浮腫みも寝癖もゼロ。お手伝いさんとかいるのかな?朝起きたら全て用意してくれるお手伝いさん欲しいな…って、また寝そうになってた。危ない。

「この前の薬の説明会に来てくれていた患者さんは、西岡さんが統合失調症で、秋山さんと森本さんがうつ病、青木さんと藤原さんが摂食障害で、西村さんは統合失調症ですが今は水中毒が問題になっている患者さんです。

西岡さんのことは昨日お話ししましたからもう大丈夫でしょうか。何か気になる事はありました?」

サトシ君に感情移入し過ぎて、西岡さんのことあんまり記憶に残ってないんだけど…、そういえば、そう。

統合失調症の人は知的に低くなるんですか?」

統合失調症の全ての患者さんが知的に低くなるとは思いませんが、再発を繰り返す患者さんは知的にレベルダウンする場合があると思います。激しい症状が続くとどこかしら脳に器質的な変化が出る可能性があると言われています。かなり個人差がありますし、統合失調症になったらすぐにどうこうという話ではありません。

岡林先輩の表情が僅かにひきつった様に悲しげだったけど、すぐにいつもの表情に戻っていた。ちょっと気になる。

「では、うつ病の秋山さんと森本さんの説明をしましょう。

うつ病の患者さんは、真面目、勤勉、頑張り屋さん、完璧主義者だとよく言われます。

秋山さんと森本さんはお二人とも専業主婦なので、自宅では休息を取ることが難しいと思いますから入院して来られて良かったと思います。つい頑張ってしまう人は強制的に入院してでも休息を取って薬の調整をした方が治療がスムーズにいくような気がします。もちろん強制はできませんが、何かしらの方法で頑張る事ができないようにすることが必要じゃないかと思います。

うつ病の入院患者さんは多いです。訴えも様々ですが、うつ症状で起こり易い症状は把握していて下さい。抗うつ薬の副作用と、うつの症状が一緒の場合が多いので混乱することも多いです。

 

訴えの多い症状から説明していきます。