抗うつ薬の副作用と、うつ病の症状。

岡林先輩がいつもの様に静かに話し始める。

「まず、便秘です。

排便は、食べ物、水分、運動、睡眠、ストレスなどの影響を大きく受けます。

個人差はありますが、入院初期は休息が第一になることが多く、体をあまり動かさない方が良い時期があります。休息は必要ですが、活動性が低下することによる便秘は起こりえます。

うつの症状に不眠があります。不眠によっても便秘は起こります。

入院という環境の変化だけでも大きなストレスになりえます。これも便秘を引き起こす可能性があります。うつという病気自体が直接、胃腸運動を妨げることもあるようです。

もちろん、抗うつ薬が原因で便秘になることもあります。どちらにしろ便秘薬の調整を行います。

便秘が抗うつ薬だけが原因で起こるのではないということを説明しておかなければ、抗うつ薬を勝手に止めてしまう人が実際にいます。抗うつ薬は効き目が出るのに時間がかかりますし、抗うつ薬が奏功すれば活動性や食欲も上がり、便秘がかなり緩和されることが多いですので、抗うつ薬をまず飲み続けて頂くことが大切だと思っています。

便秘薬の効き方は個人差がありますし、生活に合わせて使用しなければいけませんから、入院中に便秘薬の使い方をマスターして、退院後も対応できるようにするのが目標です。

 

次は、記憶力低下についてです。

記憶力低下は、うつ病でとても多い症状です。しかし、薬によりますが抗うつ薬でも起こりえます。

抗うつ薬を増やして、集中力が上がったと感じる方もたくさんいますが、その逆もあります。個人差が大きいとしか言えないですね。

 

そして、目の疲れ、かすみ目。

うつ病では、目の疲れやかすみ目の訴えも多いです。

うつ症状の患者さんは体も疲れやすくなっています。不眠の方がほとんどですし、かなり疲れが溜まっている状態です。

疲れを目から感じる患者さんも多いですので、うつ病の症状の1つとも言えるかもしれません。

もちろん精神的な疾患などとは全く違う眼病なのかもしれないので、眼科にしばらく行っていない患者さんには眼科受診をすすめる場合もあります。

抗うつ薬で目がかすんだりぼやけたりすることもあります。

 

最後に、口渇についてです。

朝起きた時だけ口の渇きを強く感じる場合は、寝ている時に口を開けて寝ている可能性が高いです。

日中に慢性的に口が渇いたり、人と話していると口の中がベタベタしてきて話せなくなるという患者さんがいます。この場合は、抗うつ薬の副作用だと言えます。こまめに口に水を含んでもらうといいですね。口の中の乾燥を防ぐジェルなども薬局で買えますから、それを使用して頂く場合もあります。

 

便秘、記憶力低下、目の疲れ・かすみ目、口の渇きは特に訴えが多いですので覚えておいて下さい。

 

うつの症状には、希望が全く持てないなどのまさに『鬱(うつ)状態』という症状から、『細かいことがすごく気になりだす』『イライラしてたまらない』という症状まで本当に様々です。その時その時で対応していきましょう。

 

薬剤師としてはどうしようもないことですが、薬が効きにくい人もいます。