水中毒とは! 水分を我慢することへの苦痛。(チョコレートを我慢できない私はその辛さがちょっと分かる?)
今日は金曜日。
今日頑張れば明日から週末。ゴロゴロしたい!
ジョニーデップの新作映画観たい。撮り溜めてるクリミナルマインド観たい。
「おはようございます」と、疲れを見せない岡林先輩。
「今日は、今週の薬の説明会に来て下さった西村さんの説明をして、その後は、服薬指導の説明を簡単にして終わりです。
来週に2,3回一緒に服薬指導に行った後は1人で服薬指導と薬の説明会に行って下さいね。」
え?いきなり?
顔が引きつってたのか、岡林先輩は優しく言う。
「大丈夫です。心配することは何もないです。難しいこともないです。初めてで迷うことがあれば、なんでも聞いて下さい。
では、西村さんの説明をします。西村さんは、水中毒です。水中毒というのは聞いたことがありますか?」
「水を飲みすぎて電解質のバランスが崩れ、意識障害などを起こすものですか?」
恐る恐る答えてみる。
「その通りです。電解質のバランスが崩れます。電解質のバランスが崩れることは、命に関わります。
水中毒になる前に、必ず『多飲』というものを通ります。
多飲の時期が10年くらいあって、水中毒の域に入っていくと言われています。正確にいつから多飲が始まるのかは確定できないと思いますが、数か月間でいきなり水中毒になるわけではないということです。もし、入院中の患者さんで『水を飲むと頭がスッキリする。』と言っていたり、『水は飲めばいいほどものだから』と言う方がいらしたら注意が必要ですから、担当の看護師さんや栄養士さんに相談します。
水中毒の9割以上は統合失調症ですが、強迫性障害やその他の疾患の患者さんでも起こります。
もともとベースに持っている精神科の疾患が悪化してくると、多飲に拍車がかかると言われています。
水中毒も大変難しい疾患の1つです。川村さんは、ダイエットをしたことがありますか?」
ん?ダイエット?
「はい。あります。」
「その時、食べたいのに食べるのを我慢しました?」
「我慢しました。仕方ないからコンニャクをいっぱい食べてました。」
「川村さんには水中毒の人の気持ちがよく分かるかもしれません。食事を我慢するよりも飲水を我慢する方が難しいと言われています。」
もし私が、チョコレートを一生食べたらいけないと言われたら…。本気でどうしよう。
「水中毒の症状としては、尿失禁、嘔吐、吐き気、下痢なども起こりますが、精神症状の乱れも問題になります。
攻撃性が上がったり、錯乱したり、認知レベルが下がったり、集中力に欠けるようになります。
どれくらい水分を摂ったら水中毒になるかは個人差がありすぎてわかりません。一度に摂る水分量が多いほど水中毒になりやすいと言われますが、一度にどれくらいまでなら大丈夫と言いきれる訳でもありません。
スポーツ飲料を一気飲みしている人は糖尿病になる可能性がかなり高くなります。
水中毒の患者さんの飲水制限については主治医や看護師さんもかなり厳しく指導して下さると思います。ですから、私はあまり厳しく水分のことについては聞きません。患者さんの方から話して下さる場合は、もちろん傾聴します。
しかし通常は、睡眠がとれているか、薬はちゃんと飲めているか、精神症状は安定しているか、不安時などの頓服薬を有効に使用できているかの確認をするくらいです。喉が渇くのは患者さんのせいではないのですが、ある程度の我慢はしてもらわなければいけません。糖尿病の人が甘いものを制限されるのと同じです。
ダイエットと違い、水分!は代替できるものがないので患者さんも本当に辛いと思います。」