精神科疾患を勉強開始。

いつもの様に薬の監査をしていたら、岡林先輩がいつもの様にふわりと声をかけてきた。

「川村さん、今話しかけても大丈夫ですか?」

「はい。」

「川村さん、精神科の薬剤師の仕事はいろいろありますが、重要な仕事の1つがグループワークでの薬の説明になります。心理教育の一環で、薬の説明会を毎週しています。」

「グループワーク?」

11ではなくて、複数の患者を対象に行う勉強会みたいなものです。」

「心理教育というのも初めて聞きました。」

「心理教育は、『正しい知識や情報を心理面への充分な配慮をしながら伝え、病気や障害の結果もたらされる諸問題・初困難にたいする対処法を習得してもらう事によって主体的に療養生活を営めるように援助する方法』と、定義されています。

つまり、自分の病気について正しく知って、今後の生活に役立てていこうということです。ネットや民間療法で得た知識は偏りがあることが多いですしね。薬の説明会では、薬剤師はなぜ薬を飲むのか、薬を飲むメリットやデメリットを説明して、薬について日頃疑問に思っていることを一緒に考えていきます。

薬の説明会は、毎週行われていますので心理教育の中でも力を入れています。これがそれのパンフレットです。

スタッフは、看護師、作業療法士、管理栄養士、薬剤師です。たまに医師も来ますが、忙しいのであまり参加されません。たとえ医師が参加しても薬については薬剤師が説明します。

参加する患者は疾患が様々です。統合失調症双極性障害躁うつ病)、うつ病、パーソナリティ障害、ADHDアルコール依存症など、色々です。患者の性格や年齢も様々ですから、あんまり構えなくても大丈夫です。とりあえず、薬について勉強しましょう。」と、岡林先輩に手渡されたパンフレットに目を通す。

可愛いイラストが付いていて、見やすい。文字が多いと患者が読む気を失うらしいので、イラストが多く使われている。

ふむふむ、とパンフレットに目を通していると、岡林先輩が声を掛ける。

「私の説明だけでは分からないことも多いと思いますので、この本とこの本と…、この本も面白いです。このサイトも参考程度ですけど読むと面白いと思います。」と、やたらと本を手渡される。

重っ。こんなに?

1日は24時間しかないのに…。頭がめっちゃ良かったら、正直、医師になってますけどお。

帰り道、重い本を抱えながらトボトボ歩く。本、重いし、こんなに渡されてなんだかむしゃくしゃする。関西にいる親友の晶子に電話しよう。

「晶子、今大丈夫?」

「トミ子?久しぶりやん、どした?」

「ちょっとさ~、なんか新しい部署になったんだけど、いきなりめっちゃ沢山の本を渡されてさ。そんなん読む時間ないのに。ひどくない?」

「なんで?」

「なんでって、教える手間を省いたんじゃない?勝手に勉強しろって、けっこう酷いと思うんだけど。」

「あんたもそろそろ三十路だし。自分で勉強しなさいよ。そのなんとか先輩が良いと思った本でしょ?自分で買ったらお金もかかるし、ハズレな本も沢山ある訳だから、良かったやん、お金も時間も節約できて。あ、ちょっと急ぐからまたね。頑張れ。」と、晶子は一方的に電話を切った。

相変わらず竹を割った様な性格と言うか、姉御肌というか、大阪人というか。まぁ、ぐうの音も出ない程にまっとうな事を言われてしまった。

共感と慰めを求めて電話したのに、あっさりと突き放された。人選ミスだけど、親友と呼べるのは晶子だけだしな。あんな対応されたけど、人に話すとちょっと気が晴れるな。友達という存在は有難い。晶子、ありがと。

 

土曜日。目が覚めた時にはもう昼の12時を回っていた。ああ、昼まで寝れるなんて幸せ。

土日は休みだったので、岡林先輩から借りた本を読みふける。う~ん、面白いじゃないか。

なになに、覚せい剤を使用すると、統合失調症と同じような症状が現れる。それによって統合失調症の研究が進んでいった。へー、覚せい剤って怖いな。

お酒、覚せい剤、大麻…脳に対して薬物作用がある、と。違法『麻薬』だから、薬物作用があって当然だよね。

ん?お酒も?そうか、アルコール中毒の人もいるしね。お酒も薬物か。少量でも?

 

どんなに素晴らしいことや画期的なことが書かれていようと、読む側の理解力が伴っていなければ、書く側の意図はほとんど伝わらない。今の私は、1割理解できたらいい方かな。

おっと、サザエさんだ。もう週末も終わりか…。

 

さっさと寝よう。読破してないけど、今日は寝よう。